新海誠『君の名は。』
1回目を見た感想を書く。2回目を見たら見解が変わると思う。
# overview
『君の名は。』観たけどこれはもう秒速五センチメートルで約束の地を追われた俺たちがエジプトを出奔し過酷な放浪の末にようやくカナンにたどり着くまでのいきさつを描いた壮大な叙事詩の最終章だったというか、なんかもう新海誠作品群はメタな視点から見たときに新海誠の成長譚として受容されてしまいもはや主人公:新海誠といった状態なのでもう以降は『劇場版新海誠』と呼ばせていただくが、今回の『劇場版新海誠』は作中の全ての意図が説明ではなく描写によって解明されておりぼくはただただ涙を流すだけの機械と化してしまった。なんかもう「フィクションはこれにて完成です!有史以来ご苦労様でした!!解散!!!」という感じだった。生きてこの映画が見られて本当によかった。新海誠と同じ時代に生きていて本当によかった。ああ今はこの世界を創りたもうた神々に感謝することしかできないよ俺は。
# theme
思春期の残滓、青春の不可能性、一回性、二度と戻ってこないあの感覚を奇跡によって克服してしまった残酷な映画という感じがする。君の名を忘れてしまったら、もう二度と元には戻れない。それに気づいてそれでも前を向いて歩き出すのが『秒速五センチメートル』だったが、『君の名は。』では「君の名前は?」ともう一度聞くチャンスが、奇跡・偶然によってもたらされている感じがして残酷な救済という印象。序盤の交代するモノローグ、終盤のすれ違うシーンなどはそのまま『秒速五センチメートル』だが、本作ではその続きが奇跡によって成就してしまった世界が描かれている。これは残酷なのか?それとも、希望なのか?
三葉の父親は、宮水家の入れ替わり現象の情報を少なからず持っていたと思われる。それは、瀧in三葉に胸倉を掴まれたときのリアクションからそう思われる。彼はそれを妄言癖と形容していた。また一葉は、夢を見たことがあることを覚えている。
隕石事故を無くしてしまうということの意味をよく考えた方がいいかもしれない。忘却について。ラーメン屋のおやじについて。単なる物語や意味に回収できない不穏なもの、その集合が形成する結末の別の解釈を求めたい。
「ここではないどこかへ行きたい」「今の自分は本当の自分じゃないんじゃないか」という想いが新海誠作品にあらわれる分裂したふたつの世界として表出されていたが、本作では岐阜と東京だった。その間には時間の差異が横たわっており、しかしその跳躍にはSF的な説明は付されず、物語の波に乗る僕らと新海誠の感情に即して都合よく乗り越えられていく。こうなると、これまで描かれてきた、たどり着けなくてもなんとかやっていこうというポジティブさ、悲しいハッピーエンドは、どうなってしまうのか。それは、否定されて二度と戻ってこないのか? それを救うような解釈を、君の名は。に求めたい。ぼくはそれを考え続けたいと思う。
思春期の残滓、青春の不可能性、人生の一回性。君の名は。は二度と戻ってこないあの感覚を奇跡によって克服してしまった極めて残酷な映画なんじゃないか?という要約になる。君の名を少しずつ忘れながら生きていかざるをえない僕らにとって、忘却は最良の友であり温厚な看守であった。そのやさしくも冷たい孤独を苦悩の裡に受け入れ、それでも前を向いて歩き出した秒速五センチメートルの達成を、君の名は。は部分的に肯定するものの、「君の名前は?」ともう一度聞く機会を偶然によってもたらしている。これは、あまりに残酷すぎないか?ラーメン屋のオヤジの悲しみを、奇跡の名の下になかったことにしてもいいのか? ぼくにはまだ判断がつかない。
# Performance
- 瀧の中に入りたての三葉がカフェに行くシーン、司たちが木ぐみの天井に感銘を受けている場面で、三葉in瀧は当然そんなものには目もくれずにパンケーキに夢中なのだ。糸守に木ぐみの天井はありふれているらしいということがわかるシーン
- もしかしたら、三葉の自宅の天井を描いたシーンがあったのではないか?僕だったらそれを入れていく
- 勅使河原は序盤でオカルト好きであることが明示されているので、終盤に隕石が落ちてくるという話を信じたことの説明は一応できる
- 瀧の仕事で糸守の街を再建する未来が見える
- 三葉in瀧がバイトを初日からこなし始めるシーン。三葉ハイスペックすぎると思うが、夢だと思いながらヤケクソでやってるからなんか成立してる、という説明は一応できる
- 瀧in三葉が美術の時間に机を蹴って威圧するシーン、言の葉の庭と韻を踏んでいる
- 糸守の絵を見て瀧に協力する高山ラーメン屋のオヤジの視点は、視聴者の視点とシンクロしているので高ぶる。つまり、視聴者は美しい糸守の景色をこれでもかと見せられてきて、そしてそれが破滅してしまった現在の様子を見せられる。俺たちはその悲しさを、ラーメン屋のオヤジと共有しているんだ
- 糸守の湖を序盤に見ると、隕石湖かカルデラ湖か、といった印象を一発で与える。しかしそれについて説明はなく、描写して見せているだけなので、終盤に彗星の話が出てきたときに、物語の快楽を生じる。すなわち、視聴者の頭の中で情報が結合して快楽を生じる
- 御神体の中で口噛み酒を飲んだ直後のシーンの走馬灯
- 描写によって駆動するということは、シチュエーションを描くということであり、シチュエーションの中で物語の整合性などの理屈を描かなければならない。そのハードルは高い。新海誠はその点にそこまで成功していない、もしくは重視していないという指摘があるが、君の名は。に関して言えば、かなり成功しているように思える
思うところはたくさんあるけど結論としては、ぼくは新海誠の、映像と音声によって人間を強制的に快楽の坩堝に叩き落とす行為に共鳴するのでこの映画の評価は常に満点ということになります。人間は動物です。ありがとうございました。
ErgoDox組立てとキーマップの話
この前組み立てたInfinity ErgoDoxのキーマップが固まりつつあるのでご紹介。
ちなみにErgoDox とはオープンソースの左右セパレート型キーボードで、名前の通りエルゴノミクスな設計により肉体への負荷を軽減してくれるキーボードであり、朝起きてから寝るまでキーボードの前に座って腱鞘炎と闘うemacser御用達の素敵アイテムであります。
ErgoDoxの優れている点は、親指という最も強靭な指を効率的に使えるように広大な親指エリアが設けられていること、ファームウェアもオープンソースなので自由なキーマップがプログラムできること、あと左右セパレート型なので肩や手首への負担が軽減できること、などです。
腕を開いて胸を張った自然な姿勢で打鍵していると、これがタイピングのあるべき姿なのだという感慨がふつふつと湧いてきます。ぼくは今から予言しておきますが、今後は左右セパレート型じゃないキーボードを会社が提供した場合即労災が適用されるようになってくると思います。
ErgoDoxの入手先
現状でErgoDoxの購入先は3つくらいある。
- IndiegogoにてErgoDox EZ(完成品)を注文することができる。高さ調節用のチルトが付いてたり、見た目に手作り感がなくてなんとなくクォリティが高い感じがする。
- FalbaTechではパーツの素材やカラーに選択の自由がある。パーツによってはかなりキューティクルな見た目のErgoDoxに仕上げることも可能。
- MassdropにてInfinity ErgoDoxの組み立てキットが提供されており、半田ごてを用意して自分で組み立てる必要がある。僕の場合、Massdropで注文してからkitが届くまでに2,3ヶ月かかった。Infinity ErgoDoxには上部にLCDディスプレイが付いており、ファームウェアを書き換えることでLCDの発光パターンや表示パターンを自由に設定することができる。
ファームウェアについては、ErgoDox EZは前回のPlanckキーボードと同じqmk firmwareが提供されている。Infinity ErgoDoxについてはKiiBohd controllerが提供されている(WhiteFoxも同じ。Massdrop系はこっちっぽい)。
ぼくはしばしばMassdropで買い物してる流れでInfinity ErgoDoxを購入して組み立てました。
ファームウェアのビルド
ファームウェアをビルドする前にdfu-utilを用意する。Macの場合はhomebrewで準備するのが楽チン。
brew install dfu-util
オープンソースのFirmwareとしてKiiBohd controllerが提供されている。使い方としては、以下のシェルスクリプトを実行すると、
./controller-master/Keyboards/ergodox.bash
以下の2つのディレクトリができる。右手部分がICED-R、左手部分がICED-Lに対応している。
./controller-master/Keyboards/ICED-L/
./controller-master/Keyboards/ICED-R/
ファームウェアを上書きするときは、右手部分・左手部分それぞれについて、ErgoDox背面のリセットボタンを押した状態で下記コマンドを打てばいい。
dfu-util -D ./controller-master/Keyboards/ICED-L/kiibohd.dfu.bin
キーマップをいじるときは、ergodox.bashでDefaultMapに指定されているファイルを編集する。
./controller-master/kll/layouts/mdergo1Overlay.kll
キーマップをいじるとこを詳しく知りたい人はKiibohd.comを読む。もし単純なキーマップで事足りるならKLL Keyboard Configuratorでバイナリファイルを生成してくれるので楽チン。でもCtrl+Alt+Deleteとかマウス操作の設定とかは多分できない。あと、LCDディスプレイの表示をいじりたいときはCustomizing the Ergodox Infinity LCD Logoが参考になる。
キーマップ
これがぼくが考えたさいきょうのキーマップだ!
# Keymap 0: Basic layer
#
# ,--------------------------------------------------. ,--------------------------------------------------.
# | Grv | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | Esc | | CADel| 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | =+ |
# |--------+------+------+------+------+-------------| |------+------+------+------+------+------+--------|
# | Tab | Q | W | E | R | T | [ | | ] | Y | U | I | O | P | -_ |
# |--------+------+------+------+------+------| { | | } |------+------+------+------+------+--------|
# | LCtrl | A | S | D | F | G |------| |------| H | J | K | L | ; | '" |
# |--------+------+------+------+------+------| ( | | ) |------+------+------+------+------+--------|
# | LShift | Z | X | C | V | B | | | | N | M | , | . | /? | \| |
# `--------+------+------+------+------+-------------' `-------------+------+------+------+------+--------'
# | Hyper| RCtrl| LAlt | LGUI | MHEN | | HENK | Left | Up | Down | Right|
# `----------------------------------' `----------------------------------'
# ,-------------. ,-------------.
# | L1 | PgUp | | DEL | L2 |
# ,------|------|------| |------+------+------.
# | | | PgDn | | BSpc | | |
# | Space|Lshift|------| |------| LCtrl| Enter|
# | | | SAlt | | RAlt | | |
# `--------------------' `--------------------'
# Keymap 1: Func layer
#
# ,--------------------------------------------------. ,--------------------------------------------------.
# | | F1 | F2 | F3 | F4 | F5 | F11 | | F12 | F6 | F7 | F8 | F9 | F10 | |
# |--------+------+------+------+------+-------------| |------+------+------+------+------+------+--------|
# | | |mouseU| | | | | | | | | | | | |
# |--------+------+------+------+------+------| | | |------+------+------+------+------+--------|
# | |mouseL|mouseD|mouseR| | |------| |------| | | | | | |
# |--------+------+------+------+------+------| | | |------+------+------+------+------+--------|
# | | | | | | | | | | | | |LClick|RClick| |
# `--------+------+------+------+------+-------------' `-------------+------+------+------+------+--------'
# | | | |RClick|LClick| | |mouseL|mouseU|mouseD|mouseR|
# `----------------------------------' `----------------------------------'
# ,-------------. ,-------------.
# | L1 | | | | L1 |
# ,------|------|------| |------+------+------.
# | | | | | | | |
# | | |------| |------| | |
# | | | | | | | |
# `--------------------' `--------------------'
ポイントは、
- 親指でShift, Ctrl, Alt, Enterがそれぞれ押せること。Back SpaceについてはCtrl+Hで事足りる(Windowsのときはkeyhacでemacsキーバインドを再現してる)。
- HENKとMHENとあるのは、変換キーと無変換キーで、WindowsではこれらをIMEのOn/Offにアサインしている。このため、Macと同じ感覚で、全角/半角の切り替えができる。
- CADelとあるのはCtrl+Alt+Delete。
- Hyperは Ctrl+Shift+Alt+GUI。ソフト側で変なショートカットを設定したいときに使う。
- L1とあるのはファンクションキーで、これを押している間はレイヤー1のキーマップになる。レイヤー1には試験的にマウス操作を割り当てていて、この操作感がまあ悪くない。でもトラックポイントと比べるとやっぱり使いづらい。
- 職場のWindows用を考えているので、メディアキーの割り当てとかはしていない。
という感じ。
左手小指を酷使しなくなるだけで、左手首や肘の痛みが楽になったことを実感できる。
未来感
最近はPlanckキーボードを中央に配置して未来感を演出するのにハマってる。
こちらからは以上です。
Planckキーボードの話
このまえ組み立てたPlanckキーボードに指がだいぶ慣れてきたのでこのタイミングでキーマップをさらす。
ちなみにPlanckキーボードとは、
The Planck is a DIY compact 40% ortholinear (as opposed to staggered) keyboard kit that optimises the use of your hands in a thumb-oriented layout.
このPlanckキーボードは、後でレイアウトを晒すけど、EnterキーやBackSPCキーが親指で押せること、emacsで多用するLCtrlキーまでの距離が相対的に近いことなどから、指や手首への負担を大幅に軽減してくれており、今や人生に欠かせない存在となっている。
そのうえ上掲の写真のとおりキューティクルなキーキャップを装備することでたいへん可憐な見た目のキーボードとなるポテンシャルを秘めており、ぼくに至ってはエレノアという固有名詞をつけて毎日愛でているという始末である。そういうわけで皆さんにも是非おススメしたいのでこの記事を書くことにした。
キーマップ作成環境
キーレイアウトを自由に編集するために必要となるファームウェアのコンパイルおよび書き換え環境を Planck Firmware Guideに沿って整える。MacOSユーザーならhomebrewでやるのが楽チン。
ファームウェアのソースは デフォルトのソース を適宜いじってやればいい。
たとえば自分のkeymap.cを
/qmk_firmware-master/keyboard/planck/keymaps/hoge/keymap.c
に作った場合は、planckキーボードの背面のボタンを押した状態で
make clean && make KEYMAP=hoge dfu
キーレイアウト
ぼくがかんがえた最強のキーレイアウトは以下の通り。
/* MAC
* ,-----------------------------------------------------------------------------------.
* | Tab | Q | W | E | R | T | Y | U | I | O | P | - |
* |------+------+------+------+------+-------------+------+------+------+------+------|
* | Ctrl | A | S | D | F | G | H | J | K | L | ; | " |
* |------+------+------+------+------+------|------+------+------+------+------+------|
* | Shift| Z | X | C | V | B | N | M | , | . | / | Up |
* |------+------+------+------+------+------+------+------+------+------+------+------|
* | Esc | Ctrl | Alt | GUI |Raise |Space |Enter |Louwer| GUI | Left |Right | Down |
* `-----------------------------------------------------------------------------------'
*/
[_MAC] = {
{KC_TAB, KC_Q, KC_W, KC_E, KC_R, KC_T, KC_Y, KC_U, KC_I, KC_O, KC_P, KC_MINS},
{KC_LCTL, KC_A, KC_S, KC_D, KC_F, KC_G, KC_H, KC_J, KC_K, KC_L, KC_SCLN, KC_QUOT},
{KC_LSFT, KC_Z, KC_X, KC_C, KC_V, KC_B, KC_N, KC_M, KC_COMM, KC_DOT, KC_SLSH, KC_UP},
{KC_ESC, KC_RCTL, KC_LALT, KC_LGUI, RAISE, KC_SPC, KC_ENT, LOWER, KC_RGUI, KC_LEFT, KC_DOWN, KC_RGHT}
},
/* Lower
* ,-----------------------------------------------------------------------------------.
* | ~ | ! | @ | # | $ | % | ^ | & | * | ( | ) | + |
* |------+------+------+------+------+-------------+------+------+------+------+------|
* | | | | | | | | | | { | } | | |
* |------+------+------+------+------+------|------+------+------+------+------+------|
* | | F1 | F2 | F3 | F4 | F5 | F6 | F7 | F8 | F9 | F10 | Vol+ |
* |------+------+------+------+------+------+------+------+------+------+------+------|
* | Del | | | |LANG2 | Bksp | Bksp | | | Mute | Next | Vol- |
* `-----------------------------------------------------------------------------------'
*/
[_LOWER] = {
{S(KC_GRV), S(KC_1), S(KC_2), S(KC_3), S(KC_4), S(KC_5), S(KC_6), S(KC_7), S(KC_8), S(KC_9), S(KC_0), S(KC_EQL)},
{_______, _______, _______, _______, _______, _______, _______, _______, _______, S(KC_LBRC), S(KC_RBRC), KC_PIPE},
{_______, KC_F1, KC_F2, KC_F3, KC_F4, KC_F5, KC_F6, KC_F7, KC_F8, KC_F9, KC_F10, KC_VOLU},
{KC_DEL, _______, _______, _______, KC_LANG2,KC_BSPC, KC_BSPC, _______, _______, KC_MUTE, KC_VOLD, KC_MNXT}
},
/* Raise
* ,-----------------------------------------------------------------------------------.
* | ` | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 0 | = |
* |------+------+------+------+------+-------------+------+------+------+------+------|
* | | | | | | | | | | { | } | ¥ |
* |------+------+------+------+------+------|------+------+------+------+------+------|
* | | F1 | F2 | F3 | F4 | F5 | F6 | F7 | F8 | F9 | F10 | Vol+ |
* |------+------+------+------+------+------+------+------+------+------+------+------|
* | Del | | | | | Bksp | Bksp |LANG1 | | Mute | Next | Vol- |
* `-----------------------------------------------------------------------------------'
*/
[_RAISE] = {
{KC_GRV, KC_1, KC_2, KC_3, KC_4, KC_5, KC_6, KC_7, KC_8, KC_9, KC_0, KC_EQL},
{_______, _______, _______, _______, _______, _______, _______, _______, _______, KC_LBRC, KC_RBRC, KC_BSLS},
{_______, KC_F1, KC_F2, KC_F3, KC_F4, KC_F5, KC_F6, KC_F7, KC_F8, KC_F9, KC_F10, KC_VOLU},
{KC_DEL, _______, _______, _______, _______, KC_BSPC, KC_BSPC, KC_LANG1, _______,KC_MUTE, KC_VOLD, KC_MNXT}
},
ポイントは、レイヤー1のRaiseキーとレイヤー2のLowerキーがそれぞれAppleキーボードのkanaキー(LANG1)とeisuキー(LANG2)に対応していること。これにより、日本語IMEと英数字との切り替えが、Appleワイヤレスキーボードと同じ感覚でできる1。
ただ、このkanaキー(LANG1)とeisuキー(LANG2)を有効にするためにちょっとした作業が必要だった(以下)。
かなキーと英数キーを使えるようにするために
以下の経緯で改訂Rev.upされており、特に作業は発生しなくなった。
以下の議論のおかげで助かった。
Can't use KCLANG1 & KCLANG2 key
具体的な作業としては、
/tmk_core/protcol/lufa/descriptor.c
に対して以下の変更を加えることで、kanaキー(LANG1)とeisuキー(LANG2)が有効になる。
HID_RI_USAGE_PAGE(8, 0x07), /* Keyboard */
HID_RI_USAGE_MINIMUM(8, 0x00), /* Reserved (no event indicated) */
HID_RI_USAGE_MAXIMUM(8, 0xFF), /* Keyboard Application */
HID_RI_LOGICAL_MINIMUM(8, 0x00),
HID_RI_LOGICAL_MAXIMUM(8, 0xFF),
->
HID_RI_USAGE_PAGE(8, 0x07), /* Keyboard */
HID_RI_USAGE_MINIMUM(8, 0x00), /* Reserved (no event indicated) */
HID_RI_USAGE_MAXIMUM(8, 0x68), /* Keyboard Application */
HID_RI_LOGICAL_MINIMUM(8, 0x00),
HID_RI_LOGICAL_MAXIMUM(8, 0x68),
windowsマシンでの環境
windowsマシンで使う場合、macで言う所のcommandキーをctrlキーにしたいし、あとぼくはwindowsキーをlauncher代わりに使っているので、欲しい。そこでkeyhacを使ってキースワッピングをしている。
職場では普段HHKB Japaneseを使っているが、Planckキーボードを繋いでもErgoDoxを繋いでも、編集なしですぐ使えるように、以下のconfig.pyファイルでやっている。
# -*- mode: python; coding: utf-8-dos -*-
# coding-system: utf-8-dos
# file name: config.py
#
from time import sleep
from keyhac import *
def configure(keymap):
########################################################################
## keymap-replace
########################################################################
# for HHKB
keymap.replaceKey( "(242)", "RCtrl" )
keymap.replaceKey( "LWin", "RCtrl" )
# RWinと半/全の入れ替え
keymap_global = keymap.defineWindowKeymap()
keymap_global[ "D-(243)" ] = "RWin"
keymap_global[ "D-(244)" ] = "RWin"
keymap_global[ "U-(243)" ] = []
keymap_global[ "U-(244)" ] = []
# for Planck
keymap.replaceKey( "RCtrl", "LWin" )# PlanckのRCtrlを、L-GUIにしてしまえば、この設定はいらない
keymap.replaceKey( "RWin", "RCtrl" )
########################################################################
## Basis
########################################################################
# editor of config.py
keymap.editor = "emacs"
# True: 日本語キーボード
# False: 英語キーボード
is_japanese_keybord = True
# emacs のキーバインドに"したくない"アプリケーションソフトを指定する(False を返す)
# keyhac のメニューから「内部ログ」を ON にすると processname や classname を確認することができます
def is_emacs_target(window):
if window.getProcessName() in ("cmd.exe", # cmd
"mintty.exe", # mintty
"emacs.exe", # Emacs
"runemacs.exe", # Emacs
"emacs-w32.exe"): # Emacs
return False
return True
keymap_emacs = keymap.defineWindowKeymap(check_func=is_emacs_target)
# mark がセットされると True になる
keymap_emacs.is_marked = False
# 検索が開始されると True になる
keymap_emacs.is_searching = False
# キーボードマクロの play 中 は True になる
keymap_emacs.is_playing_kmacro = False
# universal-argument コマンドが実行されると True になる
keymap_emacs.is_universal_argument = False
# digit-argument コマンドが実行されると True になる
keymap_emacs.is_digit_argument = False
# コマンドのリピート回数を設定する
keymap_emacs.repeat_counter = 1
########################################################################
## IMEの切替え
########################################################################
# toggling
def toggle_input_method():
# バルーンヘルプを表示する時間(ミリ秒)
BALLOON_TIMEOUT_MSEC = 500
keymap.command_InputKey("A-(25)")()
if 1:
if not keymap_emacs.is_playing_kmacro:
sleep(0.05) # delay
# IME の状態を取得する
if keymap.wnd.getImeStatus():
message = "[あ]"
else:
message = "[A]"
# IMEの状態をバルーンヘルプで表示する
keymap.popBalloon("ime_status", message, BALLOON_TIMEOUT_MSEC)
# Switching
# @param flag 切り替えフラグ(True:IME ON / False:IME OFF)
def switch_ime(flag):
# バルーンヘルプを表示する時間(ミリ秒)
BALLOON_TIMEOUT_MSEC = 500
# if not flag:
if flag:
ime_status = 1
message = u"[あ]"
else:
ime_status = 0
message = u"[A]"
# IMEのON/OFFをセット
keymap.wnd.setImeStatus(ime_status)
# IMEの状態をバルーンヘルプで表示
keymap.popBalloon("ime_status", message, BALLOON_TIMEOUT_MSEC)
def ime_on():
switch_ime(True)
def ime_off():
switch_ime(False)
## 「IMEの切替え」のキー設定
keymap_emacs["(28)"] = ime_on
keymap_emacs["(29)"] = ime_off
keymap_global["LC-Yen"] = toggle_input_method
# keymap_global["LC-o"] = toggle_input_method
(後略)
まとめると、MacでもWinでも文章を書く上で僕が一番気にするのがIMEの切り替えで、windowsの全角半角キーみたいにトグル式だと無駄に脳を使ってしまうので、がんばってAppleキーボードみたいな感じにしましたということです。
Apple Magic Trackpadとの相性
NPKC Wooden Wrist RestsのTKL Wrist Rest: 13.98 x 2.95 in (35.5 x 7.5 cm)とMagic Trackpadとの相性が非常によく、上掲の写真の通りぴったりサイズであり、気持ちがいいのでおススメです。
シーラッハ『カールの降誕祭』
『犯罪』 のシーラッハによる小品3点に、版画家が挿画を入れていく。体感、挿画1枚/5 ページといった頻度。挿画は文章と混然としており、黒い版画に対しては白いフォントを使うなど、画面構成が面白い。
小説の中身について。説明はせず、描写をする。小説のお手本めいているとも思う。三人称だが、その描写は登場人物の認識に寄り添って描かれており、決して逸脱しない。登場人物の所作の描写などはすばらしく、そぎ落とされた短い1文の所作によって、人物の内面に生じている異常・異変を、読者に自然に予感させる。過不足なく、最小限の描写によって人物を造形し、物語を駆動させる。端的に言って完成された小説である。
ヒトを興奮させる音楽について
音楽を聴いていて興奮することがある。音楽は音を時間軸上に配置したものだが、ヒトという生物を興奮させやすい音の配置のパターンがあるように思う。これについて体系的に論じる能力がぼくにはないので、ぼくが興奮する音楽のパターンを以下に列挙したい。そのうち体系的に整理できたらと思う。
満を持してドラムがくる
ドラムがくる。
なんかよくわからないけどメッチャ速い
メッチャ速い。
めっちゃ高い声が伸びていく
どこまでも伸びていく。下はビデオもいい。
ボレロみたいなやつ
最小構成で始まったフレーズが繰り返されるにつれて賑やかになっていくパターン。
静かな曲調から一転して激しくなる
いきなりくる。
盛り上がっていって絶頂するパターン
ビクンビクンッ。
サビ前に打楽器がドコドコくる
ドコドコくる。
静かな曲調から徐々に盛り上がって爆発する
くるぞ……くるぞ……というパターン。
ベースがイレギュラーなフレーズを放つ
下の動画の2:04あたりで放つ。
同じフレーズを繰り返してタメてから放つ
ずるい。
フォウ!デーッデーデ(ドコドコドコ のパターン
パターンとは言っていない。
Banana, KIA.
塩田明彦『映画術』
といったわけで、映画が本当に面白いのは、今ご覧になったように、上辺で語られている物語がある一方で、それとは別の次元で、もう一つの物語がスタイルとして語られているからです。
僕らはよく、役者が会話するシーンや泣いているシーンなどがドラマで、銃撃戦やチャンバラが始まったらそれはアトラクションなんだ、ドラマは停止状態なんだと思いがちなんだけけども、実はぜんぜんそうじゃなくて、殺人にこそ、「動き」の連続のなかにこそ、ドラマの核心が集約されている。
自分がある世界なり対象なりを描くときに、どういう「動き」を捕まえてくるか。三隅研次はショットの天才だと言いましたけど、ああいうシンプルな動きーー影の中の動き、按摩として背中を揉む、殺陣の中で相手を背負うーーそういうひとつひとつの非常に単純んな動きの中で、一人の人間の生き様を見せてしまう。言わばその人物の人生を、「1分間」で捕まえる。何十年に及ぶ人生の「1分間」が、平手造酒の背中に捕まった一瞬だったり、平手造酒を背負った一瞬だったりする。そうした「動き」を組み合わせたものーーそれが映画なんです。
映画には映画独自の言葉遣い、話法というものがあって、これまでも語ってきたように動線だとか、衣装の美術の設計だとか光の明暗だとか、とにかくありとあらゆる演出の技術と、それから作劇の技術が相待って、一つの世界を作り出していくんですね。その作劇と演出と演技が映画史上、最も単純かつ強力な形で結びつきあっていたのが、ハリウッドの古典的な話法というもので、そうした協力関係の中では、たとえ俳優の演技がシンプルで外面的でも、映画はものすごく多くのことを観客に伝えることができたんです。
つまりですね、そもそも音楽とは何か、歌とは何かってことを僕なりに定義しますとね、一つの感覚なり、感情なり、体験なり、そういうものに一つの形を与えてですね、それを永遠に記憶したい、反復したい、持続させて行っていう、そういう欲望による一つの「形式」の発見というのが音楽だとして、その形式っていうのが、実はものすごく抽象的なはずなのに、一度形を持ってしまったその抽象的な形式=音の連なりっていうのが、なぜか人の心を動かす。それは本当は抽象的なはずなのに、ものすごくリアルに存在する何かになっちゃう、しかも、そんなふうに一度かたちになってしまうと、そもそも土台にあった現実との対応関係に支えられなくても、音楽は平然と存在出来てしまう。(中略)
だから演技なら演技で、その演技というものがある瞬間、現実の単なる形態模写であることを超えて、あるかたち(「形式」)を持ったとき、それが現実の反映だから力があるんじゃなくて、もはや現実を超えて、一つのかたちがかたち自身の表現としての強さによって、あるリアリティを持ってしまう……人の心を動かすことができてしまうときにね、ああ、これは音楽だって……。
面白いことがわかりやすい言葉で具体例を交えて書かれています。映画の技法とかそういうのに足を突っ込みたい人が最初に手にすべき本なんじゃないかな。