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鳰のような形をした僕の迂回路

My detour/diversion like a (little) grebe.

すーぱーそに子の詩学

机の上に万年筆 のインクが載っている。ラベルにtsuki-yoと書かれており、それはおそらく月夜と当てるのが正しい。フタが開きっぱなしになっており、中でインクの 固化がはじまっている。インク瓶の隣にミュッシャの『月』が立て掛けられている。高さ30cm程度の額に収まる『月』の目線は優しげだ。その視線の先に A4サイズの紙がある。紙は『野生の蜜』を重しにして広がっている。風が部屋の中に入ってくるから、重しがないと飛んでいってしまうのだ。青黒い月夜のインクが、紙上でなにかを語っている。

掘り出された悲しみ。ディスプレイのうつろな反射。電源が入ったスピーカーが沈黙するホワイトノイズ。すべては机上にある。机上で繰り広げられている。

机から目を外すことが君にはできない。かわりにぼくが観よう。机を離れて、本棚をなめるように移動し(前日島、百年の孤独、エコー・メイカー、魔女狩り、 逆光《上》)、ベージュのカーペットを越えて、視線が靴をとらえる。窓の前にそろえられた一足の靴。小さな靴。赤い、ヒールのついた靴。

8月の昼下がり、腐臭が漂ってくる。その冷ややかな熱のために、地表から君がいる4階までまで漂ってくる。それはすーぱーそに子詩学についての来るべき書物だ。