鳰のような形をした僕の迂回路

My detour/diversion like a (little) grebe.

天気の子を観た。天気の子を観ろ。

以下所感。ネタバレ含む。

 


映画『天気の子』予報

 

  • ボーイミーツガールの類型をド直球でやりつつ、しかし一般的に望まれる正しい終わり方を完全に無視して振り切っていく傍若無人な感じにやっぱりどこか新海らしさがにじみ出ていて最高。社会のいわば常識を壊して犠牲にした上で、でもこの世界ってはじめから狂ってるんだよね、とそれを肯定して生きていく姿勢が最高に愛おしいんだよな。これを少年少女たちの視聴と興行が期待される夏休みアニメでぶちかまして一切言い訳せずに開き直るのやってて絶対めっちゃ気持ちいいでしょ。
  • エンタメとしての完成度は『君の名は。』に劣るんだと思う。でも個人的に『君の名は。』の出てくる要素全部が物語に回収されて収まるところに収まる感じが逆に引っかかっていたので、この荒削り感が愛おしいんだよな。
  • 東京の汚いところの描写とか警察に追われる状況は、これまでの新海作品に出てこなかった部分だと思う。面白いのは、ネカフェに泊まったり東京の怪しい街に囚われることを、穂高たちはことさらネガティブに感じていなさそうな点。これは、穂高たちが当初雨が降り続くことを(須賀の義母の雨に対する台詞と相反して)ことさらネガティブに捉えていないことにもつながっている。この大人たちとの断絶が、世界を犠牲にする決断の正しさの根拠になっている。
  • 過去作よりも内省が弱まっており、キャラクターと世界との外的なインタラクションが物語の原動力になっているように思う。これは、穂高と陽菜以外のキャラクターの存在感が増している(夏美の就活シーン、須賀と娘の関係が印象深い)ことにつながっている。過去作と異なり、群像劇を志向しているように思える。東京の汚いところの描写とともに、新海の新しい展開や挑戦の意思が見て取れた。
  • 神的なものによる物語解決の説得力は、『君の名は。』と同様に弱く感じる。この部分はどこかに見落としたヒントがあるかもしれないので、次回視聴時に確認したい。
  • 君の名は。はぼくを救わなかったが、天気の子はぼくを救ってくれた。ありがとう。